食と癒やしの科学
クエルセチンには、血管の拡張作用があるので、高血圧には有意な降圧作用があることが、医学的にも証明されている。また、炎症に効果のある抗酸化作用もあるため、抗がん剤の調合に加えられることもある。タマネギの健康に寄与する成分の2つ目は、プロピインである。これは、ニンニクの成分であるアリインの仲間でビタミンB₁に結合し、ビタミンの体内吸収を促進する働きがある。ご存知の通り、ビタミンB₁は、私たちの身体の疲労回復物質である。
タマネギに関わらず、多くの食材の栄養成分は化学物質であり、多くの伝統的な料理には、現在の栄養学や生化学の知識と照らし合わせてみても、理にかなっているものが多い。神経科学者であり、理学博士である小倉明彦博士の著書:料理生物学に、こうした楽しく有用な知識が掲載され、生活や料理についての知恵に触れることができる。