老いも若きも働く
淡路3市では65歳以上の高齢者はいずれも30パーセント前後である(全国では28パーセント)。兵庫県の5地域の中でもこの割合は淡路島が一番高く、淡路島の老齢化は進んでいる。一方、健康な生活には仕事で体や頭を動かすのは良い事であり、この点から淡路島には注目すべきことがある。65歳から69歳の農業従事者は551人(淡路市平成27年度)で、同年代の人1948人の28パーセントである。80から84歳の農業従事者は258人で同年代441人の58パーセントである。ちなみに、サービス業に従事する人は、65から69歳の46パーセントだが、80歳過ぎでは同年代の10パーセントに低下していて仕事は高齢者には継続しにくいことがわかる。
こうしたことは、淡路島では他の職業に比べて農業に従事することで80歳過ぎても半数以上の人が働けていることを示している。淡路では高齢でも農業によって生きる糧を得ている人が多いのである。20-30年前に比べて日本人の平均寿命は延び、75歳以下は高齢者と呼ぶべきではないと主張する医療関係者もいる。こうした環境の変化もあり、働く事は、健康な人生の維持には不可欠であり、兵庫県は環境立島淡路島と名付けた将来ビジョンを掲げ、生涯現役で暮らせる淡路島を目指している。しかし、高齢者が農業以外でも働くための機会は残念ながら現実には少ない。パソナ社は定年後の65歳以上のヒトなどにも働く機会を作ろうと“エルダー社員”プログラムとよぶものを設定している。このようなプログラムは、終生現役を通したいヒトには大きなチャンスとなっている。
一方若い人には農業に新たに就業するための機会が淡路島にはある。すでに8年前に農援隊というグループが組織され、淡路島の放置されたままになっている元耕作地などを利用し、地元の農業を営む人たちの力を借りて、全国から若い人を招いて農業の手ほどきをしている。また農業経営のコンサルティングも行っている。農援隊によれば、3年の就農学習ののち独立した就農者は島内で7人、島外で5人、農業関連の仕事を行っている人は3人である。また淡路島の野菜や米、たまねぎの販売も農援隊はおこなっている。
若い個人やカップルが都会を離れて淡路島で新たな人生をスタートする例もたくさんあり、これを支援する仲間もある(あわじ島に住もう促進協議会)。この仲間には、淡路の海水から古来の方法で塩をつくる仕事を始めたひと、藍染を始めた人、淡路島の農業大学で学んで淡路島で農業を始めた人など、新しい人生を淡路島で始めた人たちがいる。就職氷河期の人たちを採用し、淡路島での新しい事業に参加してもらう制度をパソナ社では始めており、若い人に就業の機会は増えている。若い人にとってはこどもの教育や健康が問題であろう。有難いことに淡路島の3市では0歳から中学3年生までは医療費は無料になっている。淡路島には高校も大学もあり、1時間の距離にある神戸や徳島の都会で学ぶ事もできる。