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人工知能(AI)と地方創生

このHPで再三触れているように淡路島では少子高齢化が進んでいる。この中で地域の発展や住む人々の幸福な生活をどのように達成するかは、多くの日本の他の地方と同じように大きな課題である。この点に関連して日本政府は、いくつかの方針を示している。そのうちの1つは住民の地域内での集住である。もう1つは最新の科学技術の利用である。特に、IT技術は人々のお互いの連絡の取り方を容易にするので、地域での集住で、それほど密集しなくても、遠隔の場所にいても交流が可能になるものと考えられる。実際、すでにSNSやFace Bookなどを利用する人は少なくない。

  ここでは、これに関連して今話題となっている人工知能(AI)に関してどのくらいの進展があるのか見てみたい。人が不足する事態で、病気や体調不良にどのような対応をすべきかは、特に老人の方々には深刻な問題である。もし、スマートフォンなどでこのような状況に答えを出してもらえるなら、地方の人がいない地域でも助かることは間違いない。すでにAIにより、スマートフォンで質問をするとかなりのことに答えが得られるようになっている。そこで、このような技術がどんなものか簡単に触れたい。

  現在のAI(人工知能)を用いた技術の代表例はChat GPTというアメリカのオープンAI社が開発したものである。この技術は、実際にはヒトの言葉を理解し、さまざまな質問に日本語で返答するコンピュターに組み込まれたプログラムのことである。当然翻訳の機能もあり、日本語の文章を英語文に翻訳でき、またその逆も可能である。このようなプログラムは大きな目でみると大規模言語プログラムと呼ばれ、それ自体が言葉の意味から文法、またその言葉を使ったさまざまな知識を蓄えている。もっとも進んだものでは、科学的な論文さえも質問すると書き出すという。また、絵を描いたり作曲することもできる。

 どうしてこのような高度な機能(能力)を持つプログラムがコンピューターで使えるようになったのだろうか。こうした疑問に答える特集が2023年10月号の日経サイエンス誌に掲載されている。この特集は“大規模言語モデル 科学を変えるAI”というものである。特に出村政彬氏による“大規模言語モデルとは何か”という記事に詳しく述べられている。詳細はその論文を参照して頂くとし、要点を以下に紹介したい。

  ヒトと会話できるようになるには、用語、文法などのルールをコンピュータに覚えさせる必要がある。最初は、丸ごと言葉や例文を覚えさせていたが、質問を受けて答えるときに、例文が不足すれば答えられない。そこで、次の段階では、言葉の意味と同時に、異なる言葉の関係性を覚えさせることにした。たとえば、東京とワシントン、パリはそれぞれ国の首都として同じ関係であるが、属する国が違いサイズも環境も違う。例えば、東京とパリの関係はなんかとコンピューターに入力すると、答えはどちらも国に首都で、それぞれ日本とフランスに属するとなる。それぞれの要素を比較し簡単に関係が明らかにされる。

  各言葉には、このようにいろいろな要素があり、要素の関係の度合いもさまざまである。言葉をこのように要素で描くのを分散表記という。3つの要素があれば3次元の要素がある。それぞれの要素に基づいて分散表記された言葉をその要素を手がかりに線で繋ぐと、異なる言葉の間でネットワークができる。それが結果として文章となる。すなわち、ネットワークをつくるような言葉が集まって我々が喋るさまざまな文章はできている。大規模言語プログラムはこうした各言葉の要素が沢山でも対処できる。

  われわれの頭の中には脳の神経細胞が同じようにネットワークを作っていて、ある文章を考えるとこのネットワークの結線が一つ決まることになる。同じような言葉を使っても違う文章なら結線の様子(ネットワーク)も少し異なってくる。

   大規模言語モデルでは、人間の会話をたくさん覚えさせ、この結線のパターンをまず覚えさせるという。結線経路はできやすいものと出来にくいものがコンピューターの学習で明らかになるので、結合しやすい経路としにくい経路をあらかじめつながる確率を変えてコンピューターに覚えさせる調整をすることで、コンピューターが言葉を発する際によりスムースになる。

  人間の脳内の神経細胞のネットワーク(ニューラルネットワーク)は一層ではなく何層からなっていて、より複雑な文章を作ることが可能になっている。このように言語モデルも何層にも亘って言葉のネットワークを作ることで、より高度な内容をもつ文章を作ることが可能になっているという。このようにコンピューターが学習しネットワークを改善することをDeep learningと呼んでいる。少し難しい内容だが、大規模言語モデルの概要は以上述べたようなものである。

 Deep learningによってコンピューター(プログラム)はますます賢くなり、人間の知性と比べても損傷のない仕組みができているとも言われる。人間が新たに経験や学びがあれば賢くなるようにコンピュータも賢くなるので、もはや人間には予測できない仕組みが出来つつあるとの意見もある。

  このように優れたコンピューターによる知性は、いまや人工知能とも呼ばれわれわれを助けてくれることは確かである。それによってヒトの職業のいくつかはコンピュータを用いた人工知能に奪われることを危惧する意見も多い。しかし、最初にふれた少子高齢化社会には、ヒトを助けてくれるものとして、不可欠なものとなろう。人工知能を機械を組み合んだ介護機械が中国では既に作られているとの報道が昨日あった。大阪大学薬学部では、AIを使って新薬を創出する研究が進んでいるという。また、農業用生成AIも作られ、種を蒔く最適な時期や農産物の生育や管理のためのAIも作られつつあるという。