環境保全とSDGsと淡路市
淡路島の山や海には、昔からの自然がたくさん残っている。そのいくつかはこのHPでも紹介している(新着ニュース 2024年7月11日)。こうした自然は、そのままではいずれ失われていくことは明らかである。理由は簡単で、われわれ人間の数が増え自然のままの土地は人間のために改変されているからである。明治の初め150年程前は日本の人口は3000万人ほどであったが、これに比べて現在は4倍の1億2千万人に増えている。川や海岸は、護岸のためにコンクリートで固められたところが増え自然は消滅している。鳴門海峡の海の底からは、マンモスの骨の化石が発見されており、太古には淡路島にもこうした動物がいたのだがヒトの食糧になり、姿を消している。三原平野には猪や鹿などが住み、大阪から天皇が狩にきたとされているが、そうした光景も今はない。
こうした成り行きは淡路島だけではなく、世界の問題でもあり、これに対して国連により世界中で共有することを目指した環境保全と住み良い社会を作る為の努力目標としてSDGs(Sustainable Development Goals)というスローガンが2015年に提案された。これは、地球環境はもはや太古のような姿には戻らないが、少なくとも現状の人間が住める環境を維持し未来の人間が困らないようにしようという2030年までに達成すべき日頃の人間の活動の目標設定である。
この到達目標は多面的に17項目として示されている。中心となる理念は、海や山の自然を残すとともに貧困や飢餓を無くし、未就学の子供を無くし、一方で経済活動を活発化させようという点である。貧困をなくすために徹底的に生産性をあげ、そのために天然資源を食い尽くすとはいっていない。注意すべきことは、持続可能な生産消費形態を確保することが重要であると示していることである。こうした17項目の目標の達成のために必要となる取るべき行動も169の目標(ターゲット)として示されている。こうした努力目標を世界中の国で共有することは、素晴らしいことである。特に、持続可能な生産や消費形態を無視することになれば、地球温暖化は不可避であり、いまよりひどい天候の不安定な状態を招くという不安はおそらく誰しも思うところである。
こうした目標を達成するには、われわれの経済活動や日々の生活のあり方が鍵を握っていることは確かである。ここで、国連での取り組みを現実のものとするには、人が住むそれぞれの地域に根ざした取り組みがなくてはならないものとなる。持続可能な環境を保持すると言っても、置かれた環境はそれぞれの人の住む環境によって異なることは自明である。このため、最も身近な環境を保持する活動で最も大きな役割を持つのは、村、町、市、県、府、都などの地方自治体である。
それでは淡路島の地方自治体では、環境保全やSDGsを意識してどのようなことが考えられ実行されているのだろうか。兵庫県、洲本市、淡路市などの取り組みは、それぞれのHPを見ると理解できる。それらを見ると、国や県が掲げる環境保持の目標は市に反映されているのがわかる。
淡路市が掲げる環境基本計画を例にとると、環境保全のための取り組むべき課題が6つ提示されている。これは、1。低炭素社会の実現(SDGs #7, #13に対応)、2。生物多様性の形成(SDGs#15に対応)、3。循環型社会の形成(SDGs #12に対応)、4。安全・快適社会の実現、5。環境資源を利用した地域活性化、6。地域力の向上。である。それぞれの課題に対処する具体的な方策がそれぞれについて3から4項目上げられている。例えば、3については、廃棄物の適正な処理や利用で循環的に使われる資源のリサイクルができるようにシステムを作るとある。この点は、すでにゴミの分別回収や再生利用などで進んでいる。また、項目5については、自然、文化、歴史を尊重した環境保全の起業を推進するなどが挙げられている。この点も、国生み神話に関わる淡路島の歴史と歴史遺産や芸能が大きくPRできている。淡路市だけでなく洲本市の地球温暖化対策基本計画でも、低炭素社会の実現を目指し、循環型社会の実現が提起されている。こうした地球温暖化対策も含む環境保全のための洲本市や淡路市の具体的な行動方針は、さらに詳しいことが記されている。例えば公用車の使用を控えること、節電のための事務機器の効率的使用など、驚くほど具体的である。一読に値する。
図 淡路市が掲げる6つの環境保全のための目標と22の具体的な取り組み。
図。洲本市が掲げる地球温暖化対策のためのエネルギー節約の提案例。
結局、環境保全を高いレベルで達成するには、淡路市や洲本市が公開文書に明記しているような行動を本当に行政として行うかどうかにかということと、市民の理解にかかっているのであろう。