南あわじの中川家の玉葱つくり
カレーやハンバーグから天ぷらまで、玉葱は料理には必須な食材である。甘い野菜で、その食感を含めて嫌いな人はいないであろう。一人の日本人が年間食べる玉ねぎは21.5個(平成18年分)である。この日常必須な野菜の有名な産地が淡路島である。淡路島は全国3位の量の玉葱を生産しており、その味や食感には独特のものがある。
ここでは、淡路島の玉ねぎの生産現場を紹介し、実際どのような工程で耕作され、産地から市場へとどけられるのか、淡路で生産している中川家にお話を伺って報告したい。
中川家は、南あわじ市で兼業農家をしており、現在3代目までこの仕事を家業にする伝統ある玉葱農家である。仕事がお休みの週末や仕事の合間を使って家族で玉葱を育て出荷している。南あわじ市は中央に三原平野があり、水田が広がっている(図1 上)。この周りを低い山地が囲んでいて、南東には鳴門の渦潮がある鳴門海峡との間に諭鶴羽山がある(図1中)。この山の北の緩い斜面は扇状地で、土質はフォッサマグナを南に控えた花崗岩質で水捌けがよい。日当たりのよい平野は、稲にも玉葱にもレタスにも栽培が適している。一部は玉葱街道とも呼ばれるほど玉葱畑が連なっている(図1下)。
実際の耕作開始の前に、玉葱栽培の基礎知識を整理してみよう。玉葱は、12月上旬に植えられる早生種、1月上旬に植えられる中生種、中晩生種に分けられる。種を9月の下旬から10月の上旬に畑に撒く。早生種は、12月の初めから1月に亘って畑に10−20センチに育った苗を一つずつ、間隔を置いて植える。一月後には、追肥をあたえ6月上旬まで育て、収穫する。収穫した玉ねぎは一週間ほど風にあて乾燥し出荷する。
12月の初旬のN家の玉葱の植え付けの様子を写真で紹介しよう。まず、55アールの水田と5アールの畑を11月にトラクターで掘り起こし(図2,3)、玉葱を写真のように植える畝を作る。この畝には溝がありここに10センチほどの間隔で苗を植える(図6)。植えるための専用の機械を大半のところでは使い、機械が入らないところは手で植えていく。中川家では、苗を準備しすべてを植えるのに1月以上の日数が家族総出で働いても必要であるという。
苗は図のように、100本ほどにまとめられ、束として括っている(図5)。このようにして植えられた苗の1つ1つが1つの玉葱に数ヶ月をかけて育つ。
写真は、いずれも中川和紀氏の撮影 2022年12月