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地方の創生に必要な人材の育成にはなにが必要なのか(1)

  少子高齢化が進む地方にあって、その流れを止めるには何が必要で、どうすればよいのか、今の日本の抱える最大の問題であろう。人口の減少が進まないのは、東京エリアのみである。65歳以上の占める割合は、日本の平均で30パーセント前後であり、神戸市でも100万人をきって人口減少と高齢化は進んでいる(29パーセント、住民基本台帳より推定)。淡路島では、島全体で65歳上のヒトは全体の38%程度であり、日本の平均よりかなり高く、2030年ごろには、50%に近くなると予想されている。昭和22年ごろには22万人近くあった島の全人口は14万人にまで減少している。

  人口減少を止めるには、何をすべきなのかどこでも抱える問題である。ここ淡路市では、2年ほど前から人口減少がとまり、昨年は100人前後の増加がある(ただ、全体の人口は減少している)。おそらくパソナ社の本社機能の移転にともない若手の社員が千人規模でこの数年の間に増えていることと関係していると考えられる。淡路島の残りの2市(洲本市、南あわじ市)ではパソナ社の活動拠点はなく、人口の減少と老齢化が今まで通りに進んでいることが、以上の推定が正しいことを支持している。

  地域からの若者が東京へ移住したりし、老齢化が進むことに対処するには、若者を受け入れる魅力ある雇用が創出されることが地方社会にとっては必要である。それではパソナ社は淡路島でどのようなことをしているのだろうか。少しここで紹介したい。

  すでにこの欄で触れたように(本HPの2023年11月17日ニュース参照)、淡路島の1000年の歴史を紐解き、いまの産業へ至った経緯を見てみると、淡路島全体の観光立地に行き着く。昭和や平成までの高度成長期の重厚長大産業時代には淡路にも三洋電機やパナソニックの工場があり、島内には通勤用の電車も通っていた。その時代が過ぎ、1000年の歴史を刻む水産業と農業を補完するには、今では観光業が必要と考えられている。その契機となった兵庫県が淡路島全体を公園とする立島プロジェクトを提案してからもう10年以上が経っている。淡路島には国生みの神話があり、日本はここから始まったという古事記に書かれた神話は日本人には共有され、古代からの淡路観光の要であった。しかし、これだけでは大きな観光立地は目指せない。

 現在の観光立地には淡路島の自然環境を保全することがその基盤として必要である。最盛期の淡路島の農業や水産業をある程度回復することは、新たに観光を主産業とする淡路島にとっても一つの重要な要件といえる。この状況で、パソナ社は農業の復活、特に農業に従事する若者を育てることに10年ほど前から取り組んでいる。淡路農援隊と呼ぶ組織がパソナにはある。(http://www.pasona-nouentai.co.jp/agri-uni/awaji.php)。農援隊は、島内に多く存在する耕作放棄地を利用することで、農業を始めようとする若者を育成し、循環型の農業の試みを新規に進めている。また、農業を観光と結びつける試みも行なっている(https://pasona-nouentai.co.jp/awaji_nlr/)。さらに、農作業や収穫の喜びを都会に住む人たちに共有してもらうために、農地に併設して宿泊施設やレストランをつくっている(https://www.awaji-nlr.com/)。こうした施設で使用した食品の残渣は、回収して堆肥としエネルギーや栄養源として循環させている。現在は、かなりの面積の耕作放棄地を葡萄園にしワインの生産を目指している。ただここにこうした取り組みには一つの大きな問題がある。耕作放棄地の多くはもともと水田だったところであり、使用目的が農耕用に限定されている。このため観光も関連する施設やレストランなどに耕作放棄地を転用するには規制があり、法律上変換は難しい。こうした規制の緩和の問題は淡路島以外の多くの地方でも同じように問題となっているという。

図 淡路島の耕作放棄地を農園にし、都会からの耕作経験の場を作ろうとしている(農援隊)

図 耕作放棄に立てられたレストラン(陽 燦々 ハルサンサン)。

図 耕作放棄地に造られた農業経験のための観光施設。

図 ウクライナからのバレリーナを含む踊り子によるバレー公演

 パソナ社では、社是として社会福祉を目指しており、いろいろな形で社会の抱える問題を支援することを社業としている。これらの社是に加えて文化創造というユニークな目標が社是に加えられている。文化創造とは幅広く、音楽、絵画、工芸などの芸術の振興が具体的には目指されている。この目的に沿って、バレー、オペラ、ミュージカルなどの興行がすでに行なわれており、演劇、落語などの公演もある。そのための劇場も確保され、さらに新しいオペラ劇場の建設も進んでいる。こうした芸術、芸能活動の担い手である人々は一般的に雇用が不安定である。特にコロナウイルスのパンデミックの際には、それが頂点に達した。当時は仕事を失い困った芸術家をパソナの業務の支援者とした雇用し、芸術活動も可能とし支援した。この流れは現在も継続されている。ウクライナから退避したバレリーナも活動している。このような多面的な活動で、若者や若い家族にも魅力ある住居地の拡充を目指すという画期的な試みが淡路市を中心に進んでいる。パソナ本社機能を支える仕事に加えてこうしたさまざまな活動は、減少する淡路島の雇用に新たな機会を生み出している。また日本全国や世界で起きている少子高齢化問題に対処するモデルにもなろうとしている。実際、2023年にはカリフォルニア大学の地方創生を研究する米人研究者が淡路島のパソナ社の活動の見学に来ている。